最近、私の中でもHOTワードである”UXライティング”の名著がついに邦訳されたとのことで、さっそく読んでみました!
『UXライティングの教科書 ユーザーの心をひきつけるマイクロコピーの書き方』(キネレット・イフラ 著、郷司陽子 訳、仲野佑希 監修、翔泳社)は、世界51ヵ国以上で愛読されているという名著を邦訳した、UXライティングのガイドブックです。
どんな本?
著者は、イスラエルのトップクラスのマイクロコピー専門スタジオの代表であり、コミュニティも運営しているのだそうです。デジタルプロダクトのコンテンツとマイクロコピーのライディングの実績は10年以上。
本書は、
- Part 1 ボイス&トーン
- Part 2 エクスペリエンスとエンゲージメント
- Part 3 ユーザビリティ
と3部構成になっており、UXライディングに関する考え方やプロセスだけでなく、事例が豊富なのもうなずけます。
また、この著書を翻訳した仲野佑希さんは、最初は異なる文章の作法を持つ日本でも、本書の内容は使えるのか懸念していたそうですが、まったく余計な心配ごとだったと本書の最後の方で語っていました。
本書でも示されている通り、コミュニケーションの基本はユーザーとの対話です。文法や言い回し、商習慣、文化に違いはあれど、相手の気持ちを汲み取るUXライティングのスキルは、日本の企業でもますます重宝されるでしょう。あいまいな表現や、言葉以外の意味に重きを置く「ハイコンテクスト」なコミュニケーションを好む日本人にとって、言葉に表すことはとても繊細なプロセスであり、専門家が必要なのです。(P.270より)
本書の目的として書かれているように、誰もが専門家やコピーライターになる必要はありませんが、デザインに置いて重要な要素である”言葉”を扱う者として、読んでおいて損はない一冊だと思います。
そんな本書の中から、ここにいらしたみなさんがUXライティングについて、より興味をそそられそうな部分を抜き出してご紹介します!
- BOOKUXライティングの教科書 ユーザーの心をひきつけるマイクロコピーの書き方仲野 佑希 (監修), キネレット・イフラ (その他), 郷司 陽子 (翻訳)
UXライティング(マイクロコピー)の起源
2009年にジョシュア・ポーターが自身のブログで『Writing Microcopy(マイクロコピーを書く)』というタイトルを付けて投稿し、あるeコマースのプロジェクト用に作成した決済フォームを紹介したのが始まりだそうです。
ボーダーのブログ記事は、マイクロコピー(またの名をUXライティング、UXコピー)という新たな知識の領域を定義する、最初の一歩でした。それはユーザーエクスペリエンスの中核にありながら、誰もがあまり注意を払わず、実践方法を確立して利点を活用することができずにいた領域でした。けれども以後、マイクロコピーの定義は発展し、進化して、コンテンツやコピーという範囲に留まらなくなりました。(P.7「マイクロコピーの誕生」より)
このような表現をしているので、本書ではマイクロコピーとUXライティングをほぼ同じ意味、または発展した形としているようです。また、マイクロコピーがデジタルプロダクトに与えてくれることとして、下記の3つが挙げられています。
2、ユーザビリティを向上させる
3、ブランディングを強化し差別化を図る
意外とまだ注目度の低い、UXライティングもといマイクロコピー。ここの挙げられているものは、UXに関わることが多くなった私たちデザイナーでもよく見聞きするものばかりではないでしょうか?
デジタルプロダクトに、人間味のあるつながりを期待するユーザー
日頃使っているWebサービスやアプリが温かくポジティブなフィードバックをしてくれたら嬉しいですよね。もしかしたら信用してより一層勧められたタスクに取り組むかもしれません。ですが、その一方で、期待するような反応をしなかったら失望し、反感を抱きかねません。
コンピュータやデジタルインターフェイスと向き合っても、私達はそれらがまるで人間であるかのように振る舞うのです。<中略>コンピュータと接するとき、私たちは礼儀をわきまえ、相手も礼儀正しく対応してくれることを期待します。(P.16より)
このように、コンピュータやデジタルインターフェイスが人間らしい言葉を使ってコミュニケーションを取ることで、私たち(いわゆるデジタルプロダクトを利用するユーザー)は、おのずとそのデジタルプロダクトに人間味のあるつながりや振る舞いを期待している。と言われて確かに・・と思わず本書を読みながらうなずきました。
だからこそ「言葉」は、デジタルプロダクトを人間らしく感じさせるのに重要な要因となっているのですね。
目的によって役割が変わる、マイクロコピーとユーザビリティ
Part 1〜2まではユーザーの感情に訴えるような話が語られているのですが、Part 3ではそれだけでなくウェブサイトやアプリ、あるいはやや高度なシステムで一連のプロセスを開始したら、マイクロコピーの目的は変わるといいます。
これからの段階で重視するべきなのは、わかりやすさと実効性です。<中略>ユーザーが最小限の努力で(またはスティーブ・クルーグが言うように、最小限の思考で)タスクを完了できるよう、どうサポートしていくかです。(P.181より)
ユーモアや余計な指示が不要な場面もあるので、見極めもしっかりしていきたいところですね。本書では、フォームなどでよくみる「(?)か(!)か(i)かリンクか?」というマイナーな話にも触れていて、その判断や考え方のアドバイスもしてくれています。マイナーといいましたが、これこそ”マイクロ”なコピーとも言えますね!
ほかにも気になるワードがたくさん!
ほかにもボイス&トーン(語り口)をデザインすること、会話体ライティングの6原則、モチベーションを高めるライティングの4原則など、気になるワードがたくさんあります。
ここで色々ご紹介するのも読む楽しみがなくなってしまうので、全271ページ。事例のキャプチャも白黒ではなくしっかりとカラーです。ぜひ気になる方は本書を手にとってみてください!
最後に、著者の言葉を添えておきます。
本書を手に、マイクロコピーの世界で、良い旅を。
キネレット
- BOOKUXライティングの教科書 ユーザーの心をひきつけるマイクロコピーの書き方仲野 佑希 (監修), キネレット・イフラ (その他), 郷司 陽子 (翻訳)