これからフリーランスになろうと思っているデザイナーさん向けに、私なりに「やっておいてよかったこと」や「事前に知っておきたかったこと」をまとめてみました。
私自身、ずっと会社員デザイナーだったのですが、一昨年の12月にフリーランスになりました。はじめてのことだらけで、調べてもデザイナーならではの情報も少なく、「それ早く知りたかった・・!」と思うようなことも多々あったので、その辺りの経験も活かして書き出しています。少しでも参考になれば幸いです♪
会社員からフリーランスになる前
1. 自分が満足に暮らせる生活費を知る
仕事の忙しさにかまけてお金の管理が雑だったため、私はフリーランスになる少し前から簡単な家計簿みたいなものをつけ始めていました。
記述する作業は月1回だけ。ほとんどをクレジットカードで払っているので、明細をみながらスプレッドシートに書き込みます。
これをやっていてフリーランスになったときに何が良かったかというと、
という点です。
フリーランスのメリットとして、自分で仕事量をコントロールできるというのがよく挙げられますが、その舵を失うと仕事を請け過ぎてしまい、結局会社員時代と変わらない(むしろしんどい)という話も耳にします。
私は見積もりをする時はだいたい人月工数から計算するのですが、例えば毎月50万円稼ぎたいとわかっていれば、そこから逆算して考えます。あとは、その月がかなりオーバーしているなというのもわかるので、依頼をお断りしたり、納期をずらしてもらったりの相談もできます。
ちなみに、この毎月の売上目標設定ですが、
- 会社員時代よりも社会保険・住民税や諸経費などで結構とられるので、私は会社員の時の給与よりも多めに(10〜20万程度)
- 多からず少なからず、自分が普通に満足な暮らしができる額に
するのが私のオススメです!
2. 国民健康保険の届出はお早めに
これ私が実際にやらかしたのですが、退職日の次の日=国民健康保険の資格が発生する日になるので、じつは届出をうっかり忘れていてもさかのぼって支払うことになります。ちなみに、届出は原則14日以内だそうです。(私は保険証を持ってない期間でも、2ヶ月分払うことに・・泣。あまりにも届け出てない期間が長いとペナルティもあるらしいのでご注意を。)
役所へ届け出るときに、職場の健康保険をやめた日付を証明できるものが必要なので、会社から資格喪失証明書・退職証明書・離職票のいずれかを必ずもらって置きましょう!
3. 会社員の時に済ませておきたいクレジットカード作成や引っ越し
これはもう言わずもがななので、ここでの説明は割愛しますね!
開業する時
4. 開業届は1ヶ月以内に提出
フリーランスとして開業する際に、「個人事業の開業・廃業等届出書」という書類を最寄りの税務署宛に提出します。私は会計ソフトサービスを利用して書類を作成して、郵送で送りました。
- 詳しいことはこちらの記事がおすすめです→
開業届とは? 個人事業主のための開業届の基礎知識 | クラウド会計ソフト freee
ちなみに、私の場合、屋号は「スズキアユミ」で出しました。SNSなどで常にこの表記で統一していたので、おしゃれな名前とか◯◯事務所とかにすると逆にややこしくなりそうだと思い、そうしてます。このようなハンドルネームや作家名などを屋号にしている人もいるようです。
5. 一緒に「青色申告承認申請書」も出しておく
確定申告する時に、最近はみなさん青色申告を選択すると思うのですが、じつは事前に申請書を出しておく必要があります。これを出し忘れると、その年は青色申告ができなくなってしまうので要注意です!(期限は、事業開始日から2ヶ月以内、もしくは1月1日から3月15日までだそうです。)
見積もりや請求書を作成する時
6. 「デザイン料」は源泉徴収の対象
まず、源泉徴収とは報酬が発生した時点で国が所得税を先取りする仕組みのことをいいます。
報酬を支払う側が報酬の中から納めるもので(もし源泉徴収税額を請求書に書いていない場合、その分を引いた報酬額が自分の口座に振り込まれてるはず)、受け取る側であれば特別に何かをする必要はないのですが、確定申告した時にこの源泉徴収で払いすぎた分が自分に戻ってくる可能性があります。
なので、源泉徴収税額を請求書に書いておくと、自分でも把握しておけますし、報酬を払う側もわかりやすいのでクライアントさんに親切です。
あと、源泉徴収はすべてに当てはまる訳ではなく、下記のものが対象になるそうです。
- 原稿料や講演料やデザイン料等
- 弁護士や司法書士、税理士、弁理士などに支払う報酬
- 社会保険診療報酬支払基金法の規定により支払われる診療報酬
- プロ野球選手やプロ格闘家、モデル、外交員などに支払う報酬
- 芸能人や芸能プロダクション等を営む個人に支払う報酬
- 宴会等において、接待等を行うことを目的とするホステスに支払う報酬
- 契約金など、役務の提供を約束し一時に支払う報酬
- 広告宣伝のための賞金、馬主が受ける競馬の賞金
なので、デザイナーでいうと、「Webデザイン制作費」は源泉徴収の対象だけど、「Web制作費」だと対象外なのです。(ややこしや・・)
経費を付ける時
7. 少額ならレシートでもOK
じつは経費精算する時、レシートでもお金を支払った証明になっているので大丈夫なのだそうです。なので、領収書もらうの忘れちゃった!となってもレシートがあればOKなので、ちゃんと保管しておきましょう。
追記(2021/05/19)
ただし、金額が数万円以上だと税務調査上、宛名の記載のないレシートは問題とされてしまうそうなので要注意です!
消費税法において、領収書には「購入者の名前(3万円以上の場合)」「購入の年月日」「購入の金額」「購入先の名前」「購入した品名」の記載が必要とされています(引用元:領収書とレシートはどう違うのか?)
追記(2021/05/19)
領収書をもらった時にチェックしておきたい項目は下記を参考にしてみてください。
<記載事項のチェックポイント>
・宛名…受取人(自身)の氏名や屋号が間違いなく記載されているか
・金額…数字に間違いがなく、数字の先頭に「¥」や「金」、末尾には「-」や「也」などの記載があるか
・用途…「品代」などではなく、「文房具代として」「接待費として」などの具体的記載があり、クレジットカード払いの場合は、その旨が明記されているか
・日付…日付に間違いがないか
・発行者…領収書を発行した者の住所・氏名(または会社名、店名など)が入っているか
・印紙…金額が5万円(税込)以上の場合、定められた額の収入印紙の貼り付けおよび消印があるか
(引用元:個人事業主はここに注意!領収書のもらい方と保管方法)
領収書内にプライベートなものと混ざった時
- 対象の品に丸をつけておけばOK
領収書やレシートがない時
- クレジットカードの明細書も使える
- 出金伝票を使う手もある
こんな感じで、もらった領収書をすぐ貼れるように、A4用紙にその月を書いてデスクの横の壁に貼ってます。このままクリアファイルにファイリングしておけばスマートな感じです!(会社員時代にこうやって紙にまとめて貼って提出してねと言われていたの、たしかに整理しやすいので納得です!)
8. デザイナーがよく使う勘定項目
私がよく使う勘定項目(経費を付ける時に仕訳をする項目)をピックアップしてみました。
これが正解という訳ではないので、あくまでも参考程度にご覧ください。
電車代にSuicaを使うなら、クラウド会計ソフトで履歴の取り込みができたり、モバイルSuicaから履歴を取得することも可能です。ただし、モバイルSuicaは6ヶ月前までしかさかのぼれないので、確定申告の時に一気にやるという方は要注意です!
確定申告をする時
9. クラウド会計ソフトがやっぱり便利
私も簿記などまったくわからない素人なので、クラウド会計ソフトがあると確定申告もそこまで悩まずに終わらせられるのでオススメです。たしかに有料ではありますが、しっかりと青色確定申告の65万円控除の方に申請できると思えば、全然もとが取れるんじゃないかと思ってます!
10. 確定申告の職業欄には「デザイナー」と書いた方がいい
国民健康保険が高いので、デザイナーだと文芸美術国民健康保険組合に入ることを検討すると思います。健康保険組合に入るには組合加盟の各団体の会員にならないとなのですが、おそらくフリーランスデザイナーさんの多くが選択するであろう日本イラストレーション協会(JILLA)へ入会する際、提出する確定申告書控の職業欄に「クリエイター」や「フリーランス」と書いてあるとNGなのです。
JILLAに加入できる職業名一覧
イラストレーター
イラストレーター/イラストレーション制作(業)/絵本作家/画家/美術家/
建築パース(制作)/3DCG(制作)/キャラクターデザイン
デザイナー
グラフィックデザイナー/グラフィックデザイン/デザイナー/デザイン(業)
WEB 関連事業者 ※1
WEB デザイナー/WEB デザイン/HP デザイン
漫画家
漫画家/漫画制作(業)/漫画執筆(業)
その他 ※2
編集(業)/編集者アニメーター/フォトレタッチャー/アートディレクター
(引用元:加入について | JILLA 日本イラストレーション協会 ジャイラ)
私は去年の確定申告で知らずにクリエイターと書いてしまっていて、入ろうと思っても入れませんでした・・。(開業届もクラウド会計ソフトで作成して、その時の職業欄も「クリエイター」と書いていたのでそのまま確定申告書にも反映されていた感じです。)
最後に. 私がこれから検討しようと思っていること
さて、私もフリーランスになって2年目になりまして、なんとか続けられそうなので、そろそろもう少し先のことも踏まえて
- 年金の積み立てや自分に退職金
- 健康保険組合への加入
この辺を検討していこうかなと思ってます!
まだまだ私自身もわかってないことがいろいろあるかと思いますが、会社員で一生を終えていたら一生わからないでいたであろうことも知ることで出来て、フリーランスをやってみるのも良い経験だなと感じています。
- オススメの書籍
『お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください!』
サンクチュアリ出版 / 著:大河内 薫, 若林 杏樹