たびたびSNSで話題になる、デザインやイラストなどの盗用・トレース問題。
つい最近も、有名な漫画家さんが話題になっていましたね。
デザイナーをはじめクリエイターさんの多くが、PinterestやInstagramなどを参考にしながらアイデアを膨らませていると思います。資料探しがとても“手軽”になった一方で、その便利さが「うっかり誰かを傷つけてしまうこと」にもつながる時代になったとも感じています。
今回はこの話題をきっかけに、デザインに関わる私たちが「資料を使うときに忘れてはいけないこと」について、少し立ち止まって考えてみたいと思います。
デザイン現場でも起きている「参考画像の境界線」問題
SNSで見つけた「いいな」が、盗用やトレース(※個人で練習するには問題ないが自作として発表する場合)になってしまうことがあります。
参考・インスパイア・リスペクトと、盗用・トレースのあいだには微妙なグレーゾーンがあり、デザインの現場でもトラブルが起きやすいポイントです。
例えば…
- Pinterestで見つけたロゴに似せて提案してしまう
- 海外のUIを再現しすぎてしまう
- SNSの写真をビジュアル素材として無断使用してしまう
アイデアの引き出しを広げることと、誰かの表現を借りること。その線引きが、今こそ問われているように思います。
SNSは宝庫、でも地雷原でもある
InstagramやPinterest、Xなど、資料集めに使えるプラットフォームはたくさんあります。
だからこそ、便利さに慣れてしまうと「これは誰の作品か?」「使ってもいいのか?」という意識が薄れてしまいがちです。
特にSNSの写真やイラストは、投稿者がプロかアマチュアかに関わらず、“発信者”であり、その人なりの意図や思いをもって投稿しているものです。
- 公開されている=自由に使っていい、ではない
- たとえ練習のつもりでも、投稿・公開する時点で“自作としての発信”になる
- その作品の背景には“人”がいることを忘れない
たとえ一般の方が投稿した何気ない写真だったとしても、無断で使えば傷つけたり不信感を与えたりする可能性があります。
SNSは資料の宝庫ですが、使い方を間違えると信用やキャリアを傷つけてしまう危うさもあるのです。
“参考にする”とき、私たちにできること
出典を控える/記録する
参考にした画像や資料は、あとから確認・相談できるように出典をメモしておくのが安心です。スクショを撮るだけでなく、投稿元のリンクやアカウント名も残しておくとよりいいですね。
商用利用・公開前に一呼吸置く
練習や下書きのつもりで作ったものでも、公開した時点で“自作としての発信”になります。商用利用やポートフォリオ掲載前には、「これ使ってよかったんだっけ?」と一度立ち止まる習慣を。
改変・再構成してオリジナル性を出す
構図や色の参考はOKでも、なぞるように真似してしまうとトレースと見なされやすくなります。リファレンスはあくまで“ヒント”。自分なりの解釈や再構成を意識すると安心です。
リファレンスを複数組み合わせる
1枚の写真だけをそっくりそのまま参考にするのはリスクが高めです。ポーズ・背景・色味などを複数の資料から取り入れ、組み合わせていくことで、独自性も増します。
許可が必要そうなときは事前に連絡
「あとから許可を取ればいい」はリスクが大きく、場合によっては信頼を損なうことも。迷ったら早めに「この資料を参考にしたいのですが…」と一言連絡を入れてみるのがおすすめです。
自分の作品にもライセンス表示を
自分の作品も「自由に使っていいのかどうか」が明示されていると、他の人にも配慮を促すことができます。作品ページに「転載不可」「参考利用可」など一言添えるだけでも効果的です。
最後に
便利さの裏に、創作者の責任がある。
SNSは「資料集めの宝庫」でもあり、「地雷原」にもなり得る。
だからこそ、手軽さに慣れすぎないこと。
SNSだけでなく、AIも急速に進化している今だからこそ、その画面の向こうにいる“人”の存在を忘れないように、私もデザインを行っていきたいなと改めて思います。
思い出すという意味でも、ときには美術館やイベントに足を運んだり、自分で絵を描いたり写真を撮ったりなどの創作活動を通して、人の存在や創作の大変さを再認識するのも大事かもしれませんね。
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