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アイデアづくりにも原理とプロセスがある!『アイデアのつくり方』|もう一度読みたい良書

[ 読了目安:約5分 ]

みなさんはアイデアはどこから生まれるものだと思いますか?
私はこれから紹介する書籍『アイデアのつくり方』に出会う前は、アイデアは唐突に天から降ってくるような、ふっと頭の中に湧き出るものだと持っていました。

そんな私がこの本に出会ったのは10年前のこと。そこからアイデアに対する見方が確かに変わりました。

著者のジェームズ・W・ヤング氏も、一般的なアイデアに対するイメージを本書の中で次のように述べています。

昔の船乗りたちによると、
海図の上では深い青海原しかないところに
突如として美しい珊瑚の環境が出現することになっている。
あたりには不思議な魔法の気(け)がただよっている。

アイデアもこれと同じだと私は考えてきた。
それは同じようにだしぬけに私たちの心の表面に現われてくる。
同じような魔法の気に包まれて、同じような不可解さと持って。(P16より引用)

この珊瑚の現象が実際は科学的に説明できるように、
アイデアも公式や技術はあるのではないか?

そんな著者の問いから導き出された、アイデアのつくり方を知れるのが本書になります。

この記事では、そんなもう一度読みたいと思える良書「アイデアのつくり方」をご紹介します。

BOOK

アイデアのつくり方 単行本 – 1988/4/8
ジェームス W.ヤング (著), 竹内 均 (解説), 今井 茂雄 (翻訳)

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アイデアは既存の要素の新しい組み合わせ

まず、具体的なつくり方の前に、著者のジェームズ・W・ヤング氏は、アイデア作成の原理は二つあると述べています。まず一つ目は、

アイデアは一つの新しい組み合わせであるという原理(P32より引用)

ということ。アイデアは無から生まれるものではなく、既にあるものを新しく組み合わせたもので、それを人は新鮮に感じる・・。

私自身、本書は10年前の学生の時に読んだきりだったのですが、この言葉にハッとさせられた記憶だけはたしかに残っています。

そして、アイデアを生み出すのは天性の才能のように思っていたのですが、私にも出来るのかもしれないとも思えました。

それから、私は素敵なアイデアだと思ったものを
既にあるものから新しい組み合わせ
であることを意識して観察するようになりました。

そうすると、たしかに何かと何かの組み合わせであることが見えてきます。
この視点を得られるだけでも、ものを見る時にとても面白くなります。

例えば、最近Twitterでこんな石鹸を製作したよというツイートに出会いました。

「石鹸」を使うと削り取られていくさまを、「化石や天然石」を発掘するさまに関連性を見出し、“組み合わせ”によるものだということがみえてきます。

じつはこの“関連性を見つ出す”ということも、本書で二つ目の原理として挙げられています。

新しい組み合わせを作りだす才能は物事の関連性をみつけだす才能によって高められるという原理(P32より引用)

アイデアの作成には5つの段階がある

その原理であり、本書で表現されているアイデアをつくるための『心の技術』は、5つの段階を経過してはたらくのだそうです。

第一 資料集め――諸君の当面の課題のための資料と一般的知識の貯蔵をたえず豊富にすることから生まれる資料と。
第二 諸君の心の中でこれらの資料に手を加えること。
第三 孵化段階。そこでは諸君は意識の外で何かが自分で組み合わせの仕事をやるのにまかせる。
第四 アイデアの実際上の誕生。〈ユーレカ!分かった!みつけた!〉という段階。そして
第五 現実の有用性に合致させるために最終的にアイデアを具体化し、展開させる段階。
(P54〜55より引用)

本書を読んでいないと少しわかりづらい(ぜひ本書を読んでみてください!)ので、本書の解説ページのものも合わせて置いておきます。

①データ(資料)集め、
②データの咀嚼、
③データの組み合わせ、
④ユーレカ(発見した!)の瞬間、
⑤アイデアのチェック
の五段階である。(P71〜72より引用)

私がこの過程の説明で印象的だったのは、第一〜第二段階でした。
まさに、私が普段やっているリサーチの過程で、資料が豊富であればあるほど良いのはとても実感しています。

そして、その資料も「特殊な資料」と「一般的な資料」の2つの種類が大事という話が出てくるのですが、まさにサービスデザインで言えば、

  • 特殊な資料=そのサービス(プロダクト)そのもの・事業のことなど
  • 一般的な資料=そのサービスが属する業界や市場、ユーザーのことなど

だと私は思いました。

また、面白いのが第三段階で、第二段階でぐちゃぐちゃになりだしたらまさに第三段階に移り変わったときです。

そうなったら、本書ではシャーロック・ホームズの例が登場するのですが、一旦このことは放棄してシャーロック・ホームズのように嫌がる(笑)ワトソンを連れ出して音楽会にいったりして、『自分の想像力や感情を刺激するものに心を移すこと』がこの段階になります。

最後に、アイデアづくりに苦悩したらぜひ思い出したい一冊

冒頭でもお伝えした通り、じつに私も10年ぶりに本書を手にとったのですが、以前とはまた違った視点で読むことができて面白かったです。そして、その原理やプロセス(段階)を思い出すことで、またしっかりとやっていこうとも思えました。

アイデアは商品開発やキャッチコピーのイメージが強いですが、私たちデザイナーこそ毎日がアイデアづくりの連続です。ぜひデザイナーさんにも手にとって頂きたい一冊です。

(本書の帯などにも書いてあるのですが、じつは解説ページを抜くと、本文は60ページにも満たないのです。少し文体が読みづらかったりもするのですが、それでも1時間程度で読めてしまいます!)

BOOK

アイデアのつくり方 単行本 – 1988/4/8
ジェームス W.ヤング (著), 竹内 均 (解説), 今井 茂雄 (翻訳)

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