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AIを業務で使って大丈夫?フリーランスの機密情報とツール・契約プランを考える【文章生成AI編】

[ 読了目安:約10分 ]

「今年からAIをもっと実務で活用していきたいな」
そんなことを、年明けに考えていました。

ChatGPTを個人で使い始めてから約1年以上。GeminiやClaudeも数ヶ月ほど試してみて、「これは便利かもしれない」と感じる場面が増えてきました。とはいえ、クライアントワークに使うとなると、話は別。機密情報の扱いや、そもそもどのツールを選んで課金するのか⋯正直、考えることや悩みだらけでした。

この記事では、フリーランスのデザイナーとして「どの工程でAIを使えそうか」「ツール選び」「機密情報の考え方」などを検討・整理しています。

「今すぐ業務でAIを導入しよう!」という話ではなく、AIをクライアントワークに取り入れる前に、私なりに整理した検討メモのようなものです。同じように迷っている方がいたら、一緒に考えるきっかけになれば嬉しいです。

この記事の前提:今回の検討で対象としているのは文章生成AIのみ、ヒアリング〜情報設計あたりの工程を想定しています。画像生成AIやビジュアル制作、開発などの工程についてのAI活用は、また別の機会に考えたいと思っています。

まず、どの工程で使えそうかイメージしてみる

「AIを使う」といっても、Web制作やデザインのすべての工程で使うわけではないので、
まずは、自分の仕事の流れの中で「どこに使えそうか」をイメージしてみることから始めるとよさそうです。

たとえば、デザイン思考のプロセスでいうと、共感・定義・発想・試作・検証…といった流れがありますが、AIが得意そうなのは「情報を整理する」「言語化を手伝う」「たたき台を出す」といった部分ではないでしょうか。

一方で、クライアントさんの話を直接聞いて感じ取る部分や、最終的な判断・意思決定は、やっぱり人間がやるべきところだと思っています。

「AIに任せたい部分」と「自分でやりたい部分」を切り分ける

こんなふうに、「AIに任せたい部分」と「自分でやりたい部分」を切り分けて考えてみると、導入のイメージが少し具体的になってきます。

例えば⋯

  • 情報の整理や構造化 → AIに手伝ってもらえそう
  • 頭の中のぼんやりした考えを言語化する → AIと壁打ちできそう
  • クライアントの話を聞く・感じ取る → 自分でやりたい
  • 最終的な判断や方向性の決定 → 自分でやりたい

とはいえ、私も実際に仕事で本格的に使い始めたらこの考えが変わるかもしれません。
今はあくまでも「導入前のイメージ」として、こう考えている、という段階です。

クライアントワークで使うなら、環境選びが重要

おおよそイメージがついたところで、今度は実際の業務でAIを活用するとなると「入力したデータがどう扱われるか」を確認しておく必要が出てきます。

個人用のプランだと入力内容がAIの学習に使われる可能性があります。ビジネス用のプランであれば、学習に使われない設定になっているものが多いようです。

また、AIでも得意なことが異なるので、それもある程度おさえつつ、環境(ツール)選びをする必要も出てきます。

現時点で私が検討しているサービス・契約プラン

Gemini + NotebookLM(Google Workspace Business Standard)

業務利用を前提とした契約環境。Workspace上のデータが学習に使われない前提で、
議事録整理や資料の横断整理、リサーチ用途に使えそうだと感じています。

ChatGPT(Business)

Business契約では入力データがモデル学習に使用されないため、
課題整理や情報設計のたたき、アイデア出しの壁打ち用途としては魅力的に感じています。
※ただし、最低2ユーザーからの契約となるため、フリーランスが1人で利用する場合はコスト面で慎重な判断が必要です。

Claude(Pro)

会話データを学習に使用しない方針が明示されており、
長文の整理や文章トーン調整など、補助的な用途での利用を想定しています。

機密情報の扱い、どうするか

これが一番悩ましいところかもしれません。

ビジネス用のプランで、学習に使われない契約であっても、ネットワークを介したツールである以上、リスクが完全にゼロになるわけではありません。バグや悪意ある攻撃などでの情報漏洩の危険は常にあります。

そのため、「契約」だけでなく「入力しない運用」も重要になってきますし、Google Driveなどクラウドサービスと同じで、より機密性の高い案件では、そもそものAIツールの使用を避けたり、クライアント側が用意した環境で行うなどが必要になってくるかと思います。

また、履歴オフだけでは十分でなく、「自分の画面に残らない」だけであって「機密情報保護」そのものではないというのも改めて押さえておきたい点です。

私なりの運用ルール(検討中)

○ こうしたい

  • ビジネス用の契約のAIのみ使用する
  • 学習に使われない環境を選ぶ
  • 抽象化・一般化した情報を入力する

× 避けたい

  • 個人用の契約での業務利用
  • 履歴オフだけに頼る運用
  • クライアント固有情報の直接入力

履歴オフについて

履歴オフで守れること

  • チャットがアカウント履歴に残らない
  • 後から自分や他人が見返せない
  • 端末共有時の事故防止

履歴オフで守れないこと(重要)

  • 入力データが、OpenAIなどのサーバーを通ること/一定期間保持されること
  • プランによっては、モデル改善・品質評価に使われる可能性

あくまでも、履歴オフは「ログ表示をしないモード」であって、第三者に渡らないということではないというのは、改めて認識しておきたい点です。

Web制作のどの工程で使えそうか

改めてそれぞれのAIの得意なところをおさえつつ、Web制作ならどの工程でどのツールが使えそうかを検討してみます。
(※今回はあえて、ビジュアル制作や開発工程は除外しています。)

  • ヒアリング・要件把握(ChatGPT):質問項目のたたき
  • 議事録作成(Gemini):会議直後の要約、決定事項の抽出
  • 議事録・資料の横断整理(NotebookLM):複数議事録の整理、認識ズレの抽出
  • 調査・リサーチ(Gemini):業界動向、競合傾向(公開情報のみ)
  • 課題定義・情報設計(ChatGPT):課題の構造化、サイトマップや構成のたたき
  • トーン・コンセプト言語化(Claude / ChatGPT):コンセプト文、NG表現の洗い出し
  • ライティング(ChatGPT):キャッチコピーや説明文の言い回し検討の壁打ち

ポイントは、AIはあくまでも「たたき」や「整理」までということ。最終的な判断や成果物の確認は、必ず自分でやりたいと思っています。

料金のこと、正直に書くと

フリーランスにとって、固定費は悩ましい問題ですよね…。

  • Google Workspace Business Standard:約1,600〜2,000円 / 月
  • ChatGPT Business:約4,000円 / 月 / 1ユーザー
    ※最低2ユーザーから契約が必要なため、1人利用でも約8,000円 / 月〜
  • Claude Pro(任意):約3,000円 / 月

最低限の構成で考えると、Google Workspaceのみで約1,600〜2,000円 / 月。ChatGPT Businessを追加する場合は、最低2ユーザー分の契約が必要となるため、月額で約9,000円前後になる想定です。

これが「高い」と感じるか「投資として妥当」と感じるかは、人それぞれだと思います。

私の場合は、私自身が得意としている情報設計やUXの検討フェーズでは、考えを言語化しながら整理したり、視点をずらして考え直したりする場面が多く、その点でChatGPTは相性が良さそうだと感じているので、できればChatGPTも業務で使いたいところです。なおかつ、こうしてブログも書いているので、正直Claudeも捨てがたいので、全部使いたい⋯うぐっ。

とりあえず、業務での利用はGoogle Workspaceを中心に運用し、本当に必要になったタイミングで改めて検討する、という形になりそうです。

クライアントにはどう伝える?

「AIを使っていいですか?」と許可を取りにいくよりも、方針として共有するスタンスがいいのかな、と今は思っています。不安を煽るような伝え方は避けたいですし、あくまでも「品質向上のために活用している」というニュアンスで。

私は、そのまま共有するかは置いておいて、まずは下記のように方針のドキュメントとしてまとめておこうと思いました。
もしクライアントさんに聞かれたらさっとこれを見て答えられるし、自分の中でも運用ルールとして持っておけるので安心感があります。

例:AI利用・運用・情報取り扱い方針

1. 本方針の目的
本方針は、業務におけるAI(人工知能)ツールの利用について、クライアント様の情報を適切に保護しながら、業務品質と効率を向上させることを目的として定めるものです。当方では、AIをあくまでも「思考補助・情報整理のためのツール」と位置づけ、最終的な判断や意思決定は人が行います。

2. AIの利用範囲について
当方では、AIを以下の目的に限定して使用します。
【利用する範囲】
・議事録やヒアリング内容の整理・要約
・情報の構造化、論点整理
・構成案や文章表現のたたき作成
・抜け漏れや観点の確認
【利用しない範囲】
・最終的な判断、意思決定
・デザインや仕様の確定
・契約条件、数値、スケジュールの決定
・クライアント固有情報を前提とした生成物の確定利用

3. 利用するAIツールについて
業務において、以下のAIツールを使用する場合があります。
・Google Workspace(Gemini、NotebookLM)
・ChatGPT Business
・Claude(補助的に使用)
いずれも、業務利用を前提とした契約環境を利用しています。

4. 情報の取り扱いについて
4-1. 学習データとしての利用について
業務で入力する情報は、AIモデルの学習に使用されない契約環境を利用しています。
個人向け・無料環境での業務利用は行いません。

4-2. 機密情報の取り扱い方針
以下の情報は、原則としてAIに入力しません。
・個人情報(氏名、連絡先、識別可能な情報)
・契約書の全文
・未公開の財務情報や機密資料
・NDAにより第三者利用が制限されている情報

やむを得ずAIを活用する場合は、抽象化、一般化、要点のみの整理を行った上で使用します。

4-3. 議事録・ヒアリング資料の取り扱い
議事録やヒアリング内容については、Google Workspace 環境内において整理・要約を行います。
これらの資料は、非公開・非共有の状態で取り扱い、クライアント様の許可なく第三者に共有することはありません。

5. データの管理および共有について
AIツール上の情報は、業務遂行の目的に限定して利用します。
AIとのやり取りログや内部整理内容を、そのままクライアント様へ提出することはありません。
成果物については、必ず人による確認と判断を行った上で納品します。

6. クライアント様への価値
本方針に基づくAI活用により、以下の価値提供を目指します。
・情報整理の精度向上
・認識ズレや抜け漏れの早期発見
・設計および提案の根拠明確化
・業務スピードと品質の両立

7. 本方針の見直しについて
AI技術や社会的・法的状況の変化に応じて、
本方針は適宜見直し・更新を行います。

【補足(口頭説明用・簡易文)】
業務では、学習に使われない業務用AI環境を利用し、
クライアント様の情報は整理および思考補助の目的に限定して取り扱っています。

この整理を通して気づいたこと

ここまで書いてきて、いくつか気づいたことがあります。

  • AIに依存しない:便利だからといって何でもAIに任せてしまうと、自分で考える力が鈍ってしまいそう。あくまでも補助として使いたい
  • 運用を重くしない:細かいルールをたくさん作ったりすると、結局使わなくなってしまいそう。続けられるレベルのシンプルさと安全性が大事
  • クライアントに説明できる状態でいる:自分がどういう方針でAIを使っているのか、聞かれたときにちゃんと答えられるようにしておきたい

最後に

繰り返しになりますが、この記事は「今すぐこうしよう!」という結論ではありません。フリーランスのデザイナーとして、AIをクライアントワークに取り入れる前に、一度立ち止まって考えたことの記録です。
実際に契約して運用を始めたら、「ここは違った」「こっちのほうがよかった」ということも出てくると思います。そのときはまた、追記したり続編の記事を書きたいと思います。

もし同じように「AIを業務に使いたいけど、どうしたらいいんだろう」と迷っている方がいたら、この検討メモが少しでも参考になれば嬉しいです!

(みなさんのオススメもあったらぜひXや感想レターで教えてください!)

Thanks: Eyecatch image by Ant Rozetsky on Unsplash